台風一過の日本。12日夜、日本海を東北東に進んでいた台風4号が東北地方を横断して太平洋側に抜けた。気象庁によると台風4号は秋田市付近に上陸し、山形県酒田市では最大瞬間風速23メートルを観測。岩手県の太平洋側に抜けた。8月の大型台風は珍しい。台風一過で一安心したものの熱い夏に逆戻り。
7月25日付、天候異変に関する日本メディアの特集記事。『世界の気象異変/ロシアで熱波、南米では寒波/偏西風の大蛇行影響/大雨、海水温が影響』と『天候異変、世界混乱/猛暑や干ばつ 小麦価格が高騰/偏西風や海洋異変が原因か』とがある。
冬の南半球。南米各地では、寒波で少なくとも200人以上の死者が出ている。ボリビアでは過去に降雪記録がない地域で雪が降り、チリでは各地で吹雪による停電で交通が止まり、町が孤立した。アルゼンチンでは寒さで少なくとも14人が死亡、ホームレスの人を屋内に収容するなどの対策に追われ、ガス需要が増えたため炭で料理するレストランもあるという。ペルーでも、標高3千メートル以上の地域で零下24度を記録し、政府が緊急事態宣言を出した。ブラジル西部の州では寒さで家畜2万7千頭が死に、損害額は400万レアル(約2億円)に上ったという。
連日猛暑の日本だが世界に目をやると、各地を異常気象が襲っている。ロシアは記録的な暑さに見舞われ、中国は大雨続き。一方、季節が逆の南米では寒波が猛威をふるい、各地で多くの死者が出ている。原因の一つは上空で吹く偏西風の異変とされる。
モスクワはここ連日、最高気温が33~35度台を記録し、7月24日には36・7度に。クレムリン恒例の護衛交代式典が「参加者や観客の安全のため」中止された。エアコンが品切れ状態になり、救急車の出動要請も1日8千~1万回と通常の倍近くに増え、エアコンのない地下鉄で乗客の死者も出た。郊外の泥炭地が自然発火して煙が舞い、異臭とともに市中心部に迫っている。干ばつ被害も広がり、小麦輸出大国のカナダやカザフスタン、欧州連合(EU)での被害とも相まって、小麦の国際価格は20%ほど高騰した。
ロシアは西部やシベリアを中心に猛暑となり、同国気象庁によると、1日の平均気温が平年より9~10度も高い状態が長く続き、「130年の観測史上最も暑い年になる」(フロロフ同庁長官)。緊急事態省によると、水死者は全土で昨年より倍増、6月は1244人、7月も891人に達し、計2千人を超えた。干ばつや自然火災で26の連邦構成体が非常事態を宣言した。そこへ今度は森林火災で、無尽蔵と言われる泥炭層に燃え移って燃え続けており、モスクワ住民は猛暑と煙でストレスが続いている。
中国南部では6月中旬から続く大雨で、7月23日現在で742人が死亡、367人が行方不明となっている。世界最大の三峡ダムは過去最多の水が流れ込み、長江は1987年以来で最大規模の洪水被害が出ている。被災者は約1億2千万人、倒壊した家屋は約67万軒に上っている。
こうした熱波や寒波は、偏西風の異変がもたらしている。西から東に向かって地球を一周して吹いているが、気象庁によると、北半球では7月から南北に大きくうねる状態が続いている。南米の大寒波も南半球の偏西風が原因だ。当初、南極側に蛇行していた風が逆に赤道側に波打ったため、低気圧ができて南極からの冷たい空気が引き込まれたとみられる。
また、今年4月以降、中国中南部を中心に大きな被害を出している豪雨による死者が、7月24日までに742人に達し、倒壊家屋も67万戸を超えた、との報道もある。中国メディアによると建造してわずか10年の橋も崩壊し始めている。災害のたびに浮上する脆弱な工法が今回も露呈した形だ。
問題の橋は浙江省常山市にある。約1千万元(約1億3千万円)をかけて建設され、2000年から使用を開始。地元政府から「優れた建造物」として表彰された。同市では過去10年、大規模な洪水は記録されていないにもかかわらず、今年4月、支柱が崩れ始めていることが発覚した。
建設当時、基礎工事に最新技術を用いなかったことで、耐久性が下がったとの指摘がある。設計関係者は「市政府は当時豊かではなかったので、簡単で工期が短い工法で橋の基礎を作った」と認めているという。豪雨による経済損失は約1524億元(約1兆9600億円)。1日約50億元(約664億円)近いペースで膨らんでいる。
中国の大雨は、インド洋の水温が関係しているとの見方がある。東京大の山形俊男教授(気候力学)によると、インド洋はここ50年で水温が0・6度上昇。今春までエルニーニョ現象が太平洋中央部の赤道近くで続いた影響でさらに水温が上がり、活発な上昇気流ができた。その気流がフィリピン近海に下降して高気圧を生んだ。暖かく湿った風が中国南部から日本の九州付近に停滞していた梅雨前線に大量の水蒸気を送り込み、豪雨をもたらしたという。
地球温暖化の影響で様々な自然現象の異変は、現実に私たちの生活にも大きな影響がでてきている。CO2削減で各国がその対策に取り組んでいる中で、もし私たちが『京都議定書』を完全に守るとなると、次のような事態制限になるかも知れないそうだ。
(1)一般家庭では夜10時以降は電気の使用を50%削減し、12時以降はテレビもお風呂もシャワーも使用禁止。テレビは一家に1台のみ使用可能。(2)自家用車の使用は週に3日のみとし、ガソリンの配給制を導入する。(3)ネオンサインは全て使用禁止。(4)オフィスビルでは下層階のエレベーター利用を禁止し、ビルに2基以上ある場合は、1基のみ使用可能とする。(5)家庭・オフィスとも冷暖房の使用を禁止し、例外的に冷房であれば気温が30度を超えた場合は28度、暖房であれば気温が10度を下回れば18度に設定する。
これだけ実践しても果たしてどれだけCO2削減できるか分からないが、とにかく今の便利な生活をある程度まで放棄しないと、とても『京都議定書』で決められた削減を達成できるものではない。利便性だけを求める現代で、多国籍民族から成り立つブラジル国では、まず不可能だろう。
また、日本企業はCO2削減は出来ないとして次善の策として排出権を買い取って、つじつまをあわそうとしていた。国連でもこの排出権を承認しない事例が出てきている。排出権は1トンあたり2千円前後で取引されていると言われており、「これは儲かる」として、日本の商社が動き回っている。日本の電力会社各社は2012年度までに総額で1億2千万トン分の排出権を購入する予定と言われていた。膨大なお金を排出権に投入することになっているが、ここで問題になるのはどこからこの排出権を買っているかで、驚くべき実態があった。
1位中国(55%)、2位韓国(12%)、3位ブラジル(10%)、4位インド(8%)、その他、ウズベキスタン、インドネシア、マレーシアとある。膨大なCO2を撒き散らしている中国から日本は排出権を買い取っている。
環境問題とエネルギー経済の問題。複雑なこれらの問題を解決し、「資源ナショナリズム」「ポスト京都議定書」「エコ」等、様々なキーワードの背景にある現実を読み取るために効果的な取り組みはあるのか?
明治学院大学で文・理の枠を超えた教育を行っている社会情報学部の石田博之教授は、「日本として高い目標を掲げて、低炭素社会実現を目指すことはとても重要なことだが、一部の先進国だけが削減に努力しても地球規模の温暖化問題の解決には至らない。いかに途上国等にもそうした枠組に参加してもらえるか、国がやるべきこと、またできることはたくさんあると考える。数値目標を前向きにとらえて、国民一人ひとりや企業・政府が達成に向けた努力をすること、ハード面での技術移転による国際協力を進めることはもちろんだが、私はそこにもうひとつ付け加えたいと思う。実は、新興国や途上国においては、エネルギーに関する統計データの収集制度や分析の技術そのものが、エネルギー政策や環境対策の立案等に大きく貢献するという側面がある」と説明している。
いま世界から注目されているのは、ブラジルの環境保全問題で政府がどのような具体的な対策をうちだすのか、今度の大統領選挙で大きなカギになるのではないだろうか。(おわり)
2010年8月18日付