東京便り 経済大国は必ずしも安住の地にあらず 10/08/25 (9:02)
中国が日本を抜いてGDPで世界第2位、ついに日本はアメリカに次ぐ2位の座を明け渡すことになった。あと30年もすればアメリカも追い抜かれ、中国は第1位の座に座ることになると予想されている。この10年間の中国は平均9%の成長を続けており、日本が1956年から1973年まで平均9%の高成長を続けた頃の状態にある▼故橘富士雄氏(元南米銀行社長)は70年代の終わり、中国視察を終えて帰国したとき、「中国は日本より20年ほど遅れて走っている」と語っていた。その見立て通り中国は、視察から20年ほど経って高度成長時代に突入したことになる▼日本の高度成長を支えたのは輸出産業だった。今の中国も成長を支えているのは、安い人件費で製造される安価な輸出商品である。これからの中国は人件費も上昇していくし、肝心のアメリカドルとの固定為替レートがこれからも続く保証はない。変動相場になると、輸出商品は製造原価の上昇もあり、価格は上昇せざるを得ない。この時期になれば中国の成長にもかげりが出てくるだろう。しかし、中国は日本と違い、13億という人口がある。この人口の消費パワーは侮れず、国内での消費活動が活発化すれば、そう簡単に成長率は落ちないかも知れない。こうしたことを見ると、日本の貿易相手もアメリカ依存から、中国を含めたアジアにシフトせざるを得ないだろう▼そういった意味で鳩山前政権が、アジア重視を掲げたのは間違っていなかった。経済の実態は一足先にアジア中心になっている。2009年度の貿易統計を見ると、アメリカへの輸出額は8兆7千億円、輸入が5兆5千億円で、ここ2、3年減少を続けている。一方、中国との貿易は輸出10兆2千億円、輸入11兆4千億円で、アメリカとの貿易を凌駕している。アジア全体との貿易は輸出29兆3千億円、輸入22兆9千億円で、アメリカ、EU(輸出6兆7千億円、輸入5兆5千億円)を上回っているのだ▼小難しい経済の話はこのくらいにして、経済大国が本当に国民を幸せにするのかという点に目を移してみよう。アメリカのインターナショナル・リビング誌が今年2月に調査発表した「住みやすい国ランキング」というのがある。生活費、環境、治安など9項目を数字化して格付けしたもので、これを見ると経済大国が必ずしも住みやすい国とは限らないことが分かる。経済大国1位のアメリカは住みやすさでは7位、2位の中国はベネズエラ、キューバよりも下位の97位である。政治的な自由度、環境整備などの数字が低く住みにくいと判定されている。ちなみに日伯両国はほぼ肩を並べ、日本は36位で、GDP8位のブラジルは38位。日本は生活費の高さ、デフレを脱却できない経済の数字が低く、ブラジルは環境整備、治安、文化の数字が低い▼こうしたデータを見ていると、幸せは金では買えない、ということがハッキリとする。経済大国が必ずしも暮らしやすい国ではないのだ。暮らしやすい国の1位はフランス(GDP7位)、2位はオーストラリアで、GDPでは20位にも入っていない。経済大国を誇っていても、肝心なのはそれが国民生活に反映し、幸せな暮らしをしているかどうかである。残念ながら日本は、経済で得た果実を国民生活に反映できていなく、落第生ということなのかもしれない。(東京支社=瀬頭)
2010年8月25日付









