東京便り 記者クラブの閉鎖性 10/08/31 (9:05)

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 日本の各官庁には記者クラブという不思議なものがある。中央官庁に限らず、地方の県庁、大都市の市庁舎、警察署にも置かれている。わかりやすくいえば、各新聞社の取材前線基地といったところだ。ほとんどの記者クラブ室は官庁から提供された部屋で、各社の記者が駐在している。日本新聞協会による記者クラブの説明は、『公的機関が保有する情報へのアクセスを容易にする「取材拠点」として、機能的な取材・報道活動を可能にし、国民にニュースを的確、迅速に伝えることを目的とする』である。ところが同クラブの構成員は『記者クラブは日本新聞協会加盟社およびこれに準ずる報道機関から派遣された記者によって構成される』となっており、インターネットメディア、雑誌メディア、小規模なマスコミ、外国メディアなどは排斥され、実際上は取材先を大規模新聞、テレビ局などに独占されている▼筆者は移民70年祭の時、サンパウロ新聞の記者として、同祭に出席された皇太子殿下(現天皇陛下)の取材に従事していた。サルバドールでのことである。夜に皇太子殿下が記者会見されることになった。当方としては70年祭の感想、日系人に会われた印象などをお尋ねする絶好のチャンスである。張り切った。ところが、この記者会見に出席することを拒否されたのだ。理由は、随行してきた宮内庁記者会が開催するものであるから、記者会会員以外は出席まかりならぬ、というのである。こちらは皇太子殿下のご感想を心待ちにしている読者に何とか伝えたい、しかもここはブラジルである。幹事社と称する記者と交渉したが、埒があかない。そこに当時の岩瀬レシーフェ総領事が現れ、「日系社会の報道機関を閉め出すなんておかしいじゃないか」という言葉で、どうにか質問しない約束で記者会見に出られた。このように日本の記者クラブというのは、会員社以外にはやっかいな存在なのである▼外国にも記者クラブ、プレスクラブというのはあるが、あくまでも記者同士の親睦を目的としたもので、日本にある外国人特派員協会もそうした存在である。日本で週刊誌の記者をしていた頃、この記者クラブにはさんざんな目にあった。官庁に取材を申し込むと「まだクラブ発表をしていないので話せません」「どちらのクラブに所属でしょうか」と、嫌みな質問をしてくる官庁の広報担当者もいた。はっきりいって今の記者クラブは、取材先の独占機関となっている。以前、民事専門の弁護士を取材したとき、記者クラブには苦労するという話をしたことがある。弁護士は「独占禁止法違反で訴えたらどうですか。おそらく勝てると思いますよ」と話してくれたことがあったほどだ▼最近はインターネットメディアの隆盛やフリーランス記者(組織に所属しない記者)などの要望もあり、少しずつ記者クラブ開放に向かいつつある。外務省、官邸などは事前登録をしておけば記者会見に出席できるようになってきた。ネットの記者からは既存のメディアとは違った質問も出るようになり、今までの情報とは違ったものもネットで流されている。インターネットの登場で、新聞の役割が終わったような話もよく聞かされるが、これからはいろいろな情報が錯綜する時代で、受け手がそれを取捨選択して判断していく時代になった、ということだろう。(東京支社=瀬頭明男)

2010年8月31日付


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