「水資源の危機」
水は私たち人間の命の源であるだけなく、地球上すべての生命の源である。ところが、私たちはその一番大切な水を大量に使い、汚し続けている。世界の水資源は枯渇寸前にあることを調べてみた。
世界人口のうち11億人が適切な飲用水を確保できていないだけでなく、国際連合は26億人が環境衛生(排水処理など)用水を適切に確保できていないと認識している。
地球上に今、飲み水として利用できる水はどのくらいあるのだろうか。実は98%が海水で、淡水は2%。その大部分は南極や北極の氷山などで、私たち陸上生物が利用できる水は全体の0・01%にも満たない。わずか一滴の水をすべての陸上生物が分かち合って生きている。この水が枯渇したり汚染されると、すべての生物が絶滅してしまう。国連調査機関では、2025年には安全な飲用水と基本的な公衆衛生サービスを持たない人々が、世界人口の3分の2に上ると見込まれている。
現在、世界の11億人が水不足の状況で生活している。不衛生な水しか得られないために毎日6千人(年間200万人以上)の子供たちが亡くなっている(国連水資源報告書)。水不足の地域では、干ばつや地下水の減少、湖沼が小さくなるなど、食糧を作るための農業用水や飲み水さえ十分に得られなくなっている。
機械化された灌漑(かんがい)農業。大規模な灌漑農業を可能にする一方で、大量の農業用水を必要とする。農業用水は水の需要の最も大きな部分を占める。日照りや干ばつの影響を最小限に抑える農法として古くから行われている灌漑農業は、安定した水の供給なしでは成り立たないため、河川や湖沼、地下水などを水資源として開発することが進められてきた。しかし、これらの水源からの限度を超えた取水により、世界各地で農業用水や生活用水などが不足する地域が増加している。
紀元前の古代エジプトやメソポタミアで始まった灌漑農業は、その水源を河川に求めていた。以来、河川は農業用水の安定した供給源であり続けたが、ダムの建設技術の発達などによって大規模な開発が可能になると、河川が持続的に供給できる水量を超えた取水が行われるようになった。
中国の黄河では、1990年代から毎年のように一時的に下流が干上がり、97年には河口から600キロに及ぶ断流が起きた日が262日に達した。上流から中流での河川の水量の90%という過剰取水が原因と考えられている。中国第2の大河が取水増加のたため1年の半分以上、河口まで水が流れなくなり、流域の人々が飲料水にも困り、工場の操業停止、公衆浴場、公衆便所も使えなくなった(なお、取水制限などにより、99年以降断流は発生していない)。
ソビエト連邦が主導した「自然改造計画」は、アラル海に注ぐアムダリヤ川とシルダリヤ川からの取水を前提とするものであった。かつて世界で4番目に 広い湖だったアラル海は、流入する水量が減少したことによって縮小していき、2004年には表面積が1960年当時の4分の1にまで減少した。アラル海 は、かつては豊富な漁獲量を誇り、周辺地域も含めて多様な生物が生息していたが、現在では塩類の濃度上昇により生物が激減した。
世界第4の湖(琵琶湖の100倍)が近代農業(綿の栽培、灌漑農業)のために水量が激減面積は半分、水量は3分の1、塩分濃度が上がり、漁獲量がゼロになってしまった干上がった湖底の塩分が風で周囲に飛散し、塩害で農業は壊滅的打撃を受けている。
水不足から食料危機を招くことが危惧(きぐ)されている。小麦などの穀物の栽培には大量の水が必要である。 1キログラムの穀物の生産にはその1千倍以上、つまり1トン以上の水が必要。水不足になることは食料の不足へとつながる。
特に人口増加に伴って、食糧を増産する必要が出てきたため、これまで農地としていなかった乾燥地帯で灌漑(かんがい)農業が行われるようになっ た。このことにより、さらに大量の水が必要となってきた。黄河やアラル海が干上がった原因は、大規模な灌漑農業を行うために上流域で大量の水を河川からく み出したことで引き起こされた。
アメリカやインドでは地下水が枯れて農業用水が十分に得られなくなり、農地が減り始めている。世界の食糧生産の4割以上を支えている灌漑農業は、その生産量を維持することが難しくなってきている。このままでは大規模な食糧不足は避けられない。
また、水をめぐって国際紛争へ発展することもあり得る。すでに紛争が起きた地域としては、リオ・グランデ川(アメリカとメキシコ)、インダス川 (インドとパキスタン)など。また今後紛争が予測される地域はナイル川(エジプト、エチオピアなど)、ガンジス川 (インド、ネパールなど)、チグリス・ユーフラテス川(トルコ、シリア、イラク)などが考えられる。
どうしてこのような水不足が起きているのだろうか。私たちの豊かな生活を支えるために水の使用量が急増したことが、最も大きな要因である。特に 食糧を増産するための水消費は、50年前に比べて3倍増加している。途上国での工業化や生活の物質的な向上によって、水需要全体も50年前の3倍に。人口 増加の2倍の割合で水消費が増えている。
さらに温暖化により世界各地の雨の降り方も大きく変化し、乾燥化が進むところや洪水により、かえって飲み水などの不足する地域も出てくる。国連 などは2025年には50億人が飲み水にさえ不足する状況になると予測している。こうした水不足を引き起こしている原因の大部分がアメリカやEU(欧州連 合)、日本などの先進国の大量消費である。
輸入に頼っている日本は、その生産に必要な水を間接的に消費している(これを仮想水と呼ぶ)。日本が輸入している大豆や小麦には100億トン以上、牛肉には200億トンの水が海外で使われていることになる。
日本の輸入品(農産物や工業製品)のために使われた仮想水は全部で約700億トンになり、日本の水の消費量全体(890億トン)に匹敵する量の水を海外で消費している。
例えば、輸入された米、牛肉で作られた牛丼を一杯食べるということは、海外で使われた数トンの水を使っていることになる。日本は普通の生活をしているだけで、想像以上に途上国や海外の人たちの生活に影響を及ぼしている。
人間の体重の6割は水である。この水がなくなっても、汚染されても生きていけない。水が豊富な日本では、昔から「水に流して」きた。昔は自然が浄化できる範囲だったが、大量生産、大量消費、大量廃棄となった今、それは不可能になった。すべてを見直すことが必要である。
命の源の水資源の枯渇や汚染は、放射性物質、ゴミ、大気汚染などの原因によって、世界中で深刻化していることを真剣に考えていかなければならない。
2011年11月18日付