「オゾン層破壊」
去る9月16日は「国際オゾン層保護デー」だった。これは1987年にモントリオール議定書が採択されたことを記念して、94年の国際連合総会で定められた記念日である。また、日本ではオゾン層保護のための国際デーがある9月をオゾン層保護対策推進月間と定め、諸々の啓蒙活動を行っている。
10月3日付読売新聞には「北極圏で最大のオゾン層破壊、4割失う」の見出しで、北極圏で今春、観測史上最大のオゾン層破壊が起きていたことが、国立環境研究所など9か国の国際研究チームの分析で分かった、とある。
オゾン層には有害紫外線を吸収する重要な作用があり、もしオゾン層がなくなれば陸上の生物は死滅する。今、人類が作り出した化学物質フロンによって危機的な状況になっている、という。オゾン層とはいったい何なのだろう。私たちにどのような影響があるのだろうか、調べてみた。
オゾンは三つの酸素原子から成る酸素の同素体で、分子式はO3。腐蝕性が高く、生臭く特徴的な刺激臭を持つ有毒物質である。大気中にもごく薄い濃度で存在する。成層圏中で、酸素分子が太陽からの波長の紫外線を吸収して光解離し、酸素原子になる。この酸素原子が酸素分子と結びついてオゾンになる。
オゾンは主に、日射量の多い赤道上の熱帯成層圏下部で最も活発に生成されている。生成されたオゾンはブリューワー・ドブソン循環によって高緯度の成層圏に運ばれるので、極域のほうが熱帯地よりもオゾンが多くなる。
オゾン層とは、地球の大気中でオゾンの濃度が高い部分のこと。オゾンは地上から約10~50キロほどの成層圏に多く存在し、特に地上20~25キロの高さで最も密度が高くなる。
赤道から両極に向かう循環で、成層圏下部にあたる高度20キロ付近で一年中続いているため、オゾンの輸送は年中途切れない。しかし、極付近の成層圏下部には極渦というジェット気流帯があり、これにより熱の輸送が遮断されて低温になり、冬には大量の極成層圏雲が生成される。春から初夏にかけて、この氷の雲が融解すると同時に塩素原子が大量に発生し、オゾンが分解されて濃度が急低下する。北極ではロスビー波の影響で極渦に乱れがあるため濃度の低下は弱いが、南極では極渦が発達し、春季にオゾンホールを発生させる主因となる。
オゾン層は、太陽からの有害な紫外線の多くを吸収し、地上の生態系を保護する役割を果たしている。紫外線は波長によって三つに分類される。最も波長が短く 有害なものはオゾン層によって完全に吸収され、地表に届くことはない。波長を持つものは、そのほとんどがオゾン層によって吸収されるが、その一部は地表に 到達し、皮膚の炎症や皮膚がんの原因となる。最も波長の長いものは、大半が吸収されずに地表に到達し、有害性は他のものよりも小さいが、しわやたるみの原 因になる。
オゾン層は、46億年前に地球が誕生した当初から存在したわけではない。誕生当初の地球の原始大気は主に二酸化炭素から成り、酸素分子はほとん ど存在しなかったため、オゾンもほとんど存在しなかった。大気中に酸素分子が増え始めたと同時に、オゾンも増え始めたと考えられている。
また、5億4千万~5億3千万年前のカンブリア爆発や、4億年前の脊椎動物の陸上進出(両生類の誕生)に関しても、生物に有害な紫外線を低減す るオゾン層との関係が考えられている。この頃は、酸素濃度の上昇によってオゾン層の高度が高くなり、地上付近のオゾン濃度が低下した時期及びオゾン濃度が 高くなり地上の紫外線がさらに減少した時期に一致する。ただし、カンブリア爆発の原因を、多細胞生物の接着分子の生合成に必要とされる酸素濃度の上昇や、 浅海域の拡大による生物の生息範囲の増加に求める説もあり、オゾン層とカンブリア爆発の関連性は証明されているわけではない。
有害な紫外線から私たちを守っているオゾン層。今、人類が作り出した化学物質フロンが、オゾン層を破壊し、危機的な状況になっている。先進国では、オゾン層を破壊する力が最も強い特定フロンは1995年末で生産停止となり、破壊力の弱い代替フロンも2020年までに生産停止の予定である。しかし途上国では、まだ特定フロンも生産され続けており、先進国への密輸などの新たな問題も生じているという。
冷蔵庫やエアコン、ジュース自販機などの冷媒、半導体の洗浄剤、スプレーのエアロゾル、断熱材(発泡ウレタン等)の発泡剤に使われているフロンガスによって、オゾン層が破壊されると、有害紫外線が増加する。紫外線BはDNAを損傷し、皮膚ガンや白内障、免疫の低下を引き起こします。UNEP(国連環境計画)は、「オゾン層破壊が10%進むと皮膚ガンは26%増加する」と警告を出している。現在、毎年200万~300万人が皮膚ガンになっていると報告されている。アメリカ人の5人に1人、オーストラリア人の2人に1人が皮膚ガンになると言われるぐらい深刻な状況になっている(02年WHO報告)。植物の生育不良やプランクトン減少が起きるため、世界規模の食糧危機も予測されている。
99年には欧州の上空にもオゾンホールが発生、北極圏のオゾン層の40%減少(NASA97年4月)、日本の上空での30%以上の減少(国立環境研究所96年4月下旬)など、各地で減少が観測されている。
今後、11~20年には最大で上空のオゾンの3分の2が破壊されるとNASAが警告しているように、本格的な危機はこれからである。国連WHOの警告、先進国の対策こうした現状を受け、国連WHOは紫外線についての警告を発表した。
多くの先進国では、紫外線対策、特に子供たちを紫外線から守る対策が行われている。公園の遊戯具のテント(オーストラリア)、小学校のプールの テント(オーストラリア)など、紫外線対策と同時に原因であるフロンに対して厳しい規制も行われている。冷蔵庫・エアコンなどは廃棄時にフロンを放出する と高額の罰金や罰則。脱フロン冷蔵庫が主流。日本のようにジュース自販機を町中で見かけることはない。
日本でも、01年6月にフロン回収破壊法が作られたが、メーカーに回収の義務はなく、断熱材のフロン回収は対象外、罰則・罰金も欧米に比べると 非常にゆるいものになっている。結果、フロン回収はほとんど進んでおらず、まだ大量に大気中に放出されている。早急にフロン法の強化(放出禁止・罰則・回 収義務化)が必要である。
ブラジルでも、皮膚がんの発生率が10年間で数倍に急増しており、欧米並みの対策が必要である。しかし、有害紫外線に対する認識がほとんどない ため、今でも海岸で肌を焼くために日光浴や半裸でのスポーツを喜び、紫外線情報を取り上げているマスコミはほんの一部である。特に子供たちを有害紫外線に さらすことは非常に危険であることを忠告したい。
この事実を知った読者が、自分できることを始めることが重要である。冷蔵庫やエアコンは買い替えの時にはフロン回収の手続をし、ノンフロン冷蔵 庫を買う。紫外線対策を心がけよう(帽子、長袖、ローション、サングラス)。小学校の遊具や海岸ではテントを設置するなど紫外線対策をするよう役所に働き かける。
フロンガスなどの排出規制の効果で、破壊が進んでいたオゾン層は 年を境に回復傾向にあることが分かってきた(06年)。オゾン量の変化には、太陽の黒点周期や季節要因、成層圏内の風向きなど様々な要因が考えられるもの の、この成層圏上部のオゾン量の増加は、ほぼ完全にフロンガスなどの排出規制の効果によるものだという。オゾン層破壊の人体への悪影響が最初に認識され始 めたのは80年。このレベルまでオゾンの量が回復するのは、今世紀半ば頃になる見込みだという。
オゾン層破壊を防止するための取 り組みについてはこれから先、新しく購入しなくてはならない電化製品などは、環境に優しいかどうかの確認をしてから購入するようにしたい。今はノンフロン の製品も多くなってきている。そういった地球環境に優しい製品を買うように消費者としても考えなければならない。そして開発者もまた、地球環境や私たちの 体に良くないものは売らない、作らないようにするべきである。
このほかにもフロンの利用されている製品は多い。しかし、フロン入りでなければ、ダメなものはない。オゾン層をこれ以上破壊しないために、自分がやれることをしっかりやっていきたい。それが、私たちの役割だと思う。
2011年11月25日付