東京便り 政治の貧困が自殺者を生む 12/01/26 (9:02)
テレビドラマを見ていて、不思議に感じたことがある。今までは何事もなく見過ごしていたことだが、家庭の仏壇で仏様にお参りするとき、チーンと鐘を鳴らす場面を見ていて、何で鐘を鳴らすのだろうと疑問がわいてきたのだ。「地下鉄の車両はどこから運び入れたんだろう」というネタで一世を風靡した春日三球・照代の「地下鉄漫才」ではないが、疑問は強くなるばかりである▼こんな宗教面の疑問は、本紙に執筆中の向谷和尚に尋ねるに限る。失礼を顧みず、初歩的な質問をしたところ、和尚はこう説明してくれた。葬儀、彼岸などの時に鐘を鳴らすのは、「参会者、お坊さん同士が、これからお経を読み始めるよ、という合図だと考えればいい」という▼この鐘を鳴らす意味は、宗派によって異なるらしい。向谷和尚の所属する浄土真宗では、死んだ人の魂は家庭の仏壇にはいないので、拝むということは祖先のことに思いをはせながら、自分のことをじっくりと見つめる時間だという。鐘を鳴らすことで仏様に、「これから勤行します」という合図とする宗派もあるのだとか▼どうにも抹香臭い話になってしまったが、長く不景気が続く日本では、実に自殺者が多い。このため仏壇の前でお参りするシーンが気になったのである。日本の自殺者数はどのくらいかというと、警察庁の調べで1998~2011年まで、14年連続で年間3万人を超えている。この数字は、交通事故者数をしのぐ数字で、一日に90人近くが自殺している勘定だ。今日本は、自殺者大国のありがたくない修飾語が付けられつつある▼このところ、鉄道への飛び込みが目立つ。ほぼ毎日のように私鉄、JRの電車が止まっている。利用者には迷惑なことだが、自ら命を絶つまでに追い詰められた人の胸中を思いやると、胸が締め付けられる思いがする。国民の実態を考えない政治の貧困が、こうした事態を招いているのだろう。人身事故で鉄道が止まっています、という駅のアナウンスを聞くたびに、「何とかしてくれ」という自殺者の声を聞く思いだ。(東京支社=瀬頭明男)
2012年1月25日付









