リレーエッセイ 4月 東 里香
12/05/07 (9:01)
モニカ・ナドールさんに教えられた「アートの力」
サンパウロに来て、はや5年。名乗った者勝ち(?)のブラジルで「ライター」を自称し、最近はあちこちに出没中。そんな中で出会ったのが、サンパウロを愛して止まないパーソナル・ガイドのフラビア・リズさん。なんとなく仲良くなり、新規ガイド先の開拓へ誘われるようになりました。
先月も声がかかり、現代美術作家モニカ・ナドールさんの住居兼アトリエへお供しました。作家についてはざっとプロフィールを読んだだけで、特に下調べなどせず出かけたのですが、夫に「あんた最近そのモニカの話ばっかだね」と呆れられるほど、印象的な方でした。
2004年、モニカさんは、サンパウロ南部ジャルジン・ミリアン地区のファベーラ付近に、地域に開いた文化施設「ジャルジン・ミリアン・アーチ・クルビ(JAMAC)」を開設。住居まで移しました。寝室も見せてもらいましたが、実に質素。サンパウロ大学現代美術館(MAC―USP)の個展を始め、サンパウロ近代美術館(MAM)、ラザール・セガール美術館、マドリッドのアート展などに呼ばれる一流作家の部屋だとは思えません。
JAMACでは、地域住民にアートと触れ合う機会を提供しています。モニカさんから、「ファベーラの親方は『芸術なんかより、勉強を教えてやってくれ』って言うんだけどね」。聞いたとき、正直、「アーティストとして食べていけるのは一握りだから、道理かも」と思いました。けれども、彼女のプロジェクトについて知るに連れ、貧しい地にこそアートの力が必要だと考えるようになりました。
例えば、「サント・アンドレ地区壁のペイント」プロジェクト。ファベーラの住居にステンシルプレートを使って装飾する施策ですが、単に「大アーティスト」モニカ・ナドールが出向き、色付けを施すのではなく、住人が大切にしているものを聞くところからスタート。「変化の象徴だから好きなの」と母親が言う 蝶、家族の愛犬など、住人の好みを反映した題材で、彼らと共に家の外壁を飾っていきます。
2年間で110軒にペイントが施されました。もちろん一流アーティストの監修があるため、大変美しい仕上がり。
ドキュメンタリービデオに映る子供たちの誇らしげな様子や「もうファベーラじゃないわ、コミュニティーよ」と胸を張る女性の姿にはぐっときます。
環境には、慣れの中で気づかないうちに影響を受けてしまいます。モニカさんには、美しいものに触れることや、自分が好きなことを見つめ直し表現することが、人にどれだけ活力を与えるかを教えられました。自分はもちろん、家族や友人、知らない誰かのためにも、日常の中にアートの力を取り入れられたら、すてきですね。









